梓さんの石にかける覚悟と思い「石で人の心を癒すということ」


♪カツンカツンカツン カツンカツンカツン♪

岡崎市小呂町にある上新石材店の作業場には今日も、のみと槌が奏でるリズミカルな音が響き渡ります。

その音をたどるとその先には、一人の女性の姿が。
この方が今回のインタビューのお相手、上野梓さんです。
梓さんは、日本で唯一、国家資格である石工品の伝統工芸士の資格を持つ女性なんです。
やわらかで表情豊かな動物の作品を数多く制作していらっしゃる梓さんに、職人というお仕事のこと、石で人の心を癒すということ、稼業を継ぐということとその覚悟についてうかがいました。

[第1回」日本で唯一の女性石職人

上新石材店さんの室内展示場には、見渡す限りの石工製品が並びます。入り口ではこんなかわいいコがお出迎えしてくれました♪
灯篭から灯り、ワンちゃんネコちゃんやフクロウ、さらにはお城まで、ありとあらゆる石製品に圧倒されます。


アノコモ(以下、アノ):はじめまして。お忙しいところ申し訳ありませんが、今日はよろしくお願いいたします。

上野梓さん(以下、梓):いえいえ、こちらこそよろしくお願いします。

アノ:さっそくなんですが、石職人さんって力仕事というか、男性のお仕事というイメージがあるんですけど、梓さんがこのお仕事をやろうと思ったきっかけから教えていただけますか?

梓:はい、石職人である父の後を継いだっていう形です。
私は3姉妹の末っ子なんですけど、本当は3人目は後を継いでくれる男の子が欲しかったみたいで。それを聞かされて育ったんですよ。
だから私は、ちっちゃい時から男の子にならなきゃいけないって思ってて。
自分のことも「僕」って呼んでました。
スカートはくのも泣いて嫌がるような子供だったんです。
それくらい男の子でいなきゃと思ってました。

そんなふうに幼少期を過ごして、小学校3年生の時の文集にはもう、「将来は、お父さんの後を継ぐ」って書いてましたから(笑)。

アノ:えっ、そんなに早くから石屋さんを継ぐ決断をされてたんですか?

梓:最終的に決断したのは、高校卒業する時ですね。
ずっと両親が一生懸命働く姿を見てきて、二人三脚で築いてきたこの石屋の仕事を途絶えさせちゃいけないなと思ったんです。
その時に、ちゃんと父に上新石材店を継ぎたいと話しました。


アノ:反対とかはなく、スムーズに認めてもらえたんですか?
職人さんって、勝手なイメージですけど、ガンコ親父的な感じあるじゃないですか(笑)。


梓:そうですね(笑)。父には反対というか、心配をされました。生半可な気持ちならやめとけと。石屋は筋力も体力もいる大変な仕事だ、お前にはそれをする心構えがあるのか、と。
それで、本当にやる気があるなら、これだけは最低限やれという条件を出されたんです。

その条件というのが、
1、石屋さんの学校である「技術工学院 石工学科」に3年間通うこと
2、技能五輪に出ること
3、石工技能士1級の資格を取ること
4、伝統工芸士の資格を取ること
それをすべてクリアするくらいのつもりでやるなら認めてやると言われました。

その条件を聞いても私の決意は揺るがなかったし、むしろ覚悟が決まったので、よろしくお願いしますと父に頭を下げて、そこから父のもとでの修行が始まったんです。


アノ:すごいですね。男の世界に飛び込む勇気というか、覚悟というか。
女性の石職人さんて珍しいですよね?


梓:はい。珍しいというか、全国で私一人なんです。

アノ:えっ!?日本で梓さんだけなんですか?
すごーいっ!!わたし今、鳥肌立ちました!


梓:彫刻家の方とかは女性でもいらっしゃるんですけど、石の職人となると私一人だけなんです。

アノ:そうなんですね~。そんなにすごい方だとは知らずに来てしまいました・・・。
ちなみに梓さんって今おいくつなんですか?


梓:36です。

アノ:わー!わたし同い年です!!
横のスタッフ:わたしたちは38なので、ほぼ同年代ですね。
同年代の女性がこんなにがんばってるなんて、なんかすごいうれしいです。
あ、自分と比べちゃうとスゴすぎて逆にヘコみますけど(笑)。

やっぱり幼いころから石にふれてらっしゃったんですか?もともと手先が器用だったとか?


梓:いえいえ、昔、姉がまだ小さいときに、父が苦労して作った細工物を壊してしまったことがあって。
それ以来、こどもたちは作業場へは立ち入り禁止というか(笑)。
なので、石にふれて育ったわけではないんです。
それに特に手先が器用ってわけでもなかったんですよね。絵をかくのは好きでしたけど。


アノ:そうなんですね。
梓さんの作品を拝見していると、繊細で柔らかい感じがして、本当に魂が宿っているように見えます。
この技術はどうやって身につけられたんですか?


梓:動物作品に関しては完全に独学ですね。
もともとうちの父は、灯篭を専門にやっていたので、修行の最初の3年間は、昼間は父のもとで灯篭づくりの修業をして、夜間は石屋の学校に通ってひたすら技術を磨いていました。
でもある日父から、『これからは灯篭だけでは難しい。お前はお前の道を探せ。好きなものを作ってみろ』って言われて。
それで、最初は手のひらサイズのフクロウを作ったんです。

石製品って、お金がかかるとか、大きくてスペースがたくさん必要とかっていうイメージがあると思うんですけど、まずはそれを取り払いたかったんですよね。
さらに、灯篭を作るときに出る端材が利用できたらいいなと思って。
それで、当時ブームだったフクロウを作ってみたんです。それが私の動物作品第1号ですね。

<続きます!第2回は 2017/08/09 Wed に更新します>

上新石材店さんについて


良質な石の産地である岡崎の地で、伝統製品の灯篭から、完全オーダーのオリジナル製品まで幅広く制作されています。 屋内・屋外展示場には数多くの作品が並び、特にたくさんの石の灯りにいっせいに光がともる様子は圧巻です。

  • 上新石材店(うえしんせきざいてん)
  • 〒444-0009 愛知県岡崎市小呂町新志1ー1
  • 営業時間 8:00-18:00
  • 定休日 日曜日
  • 公式ホームページ

【目次】梓さんの石にかける覚悟とその思い「石で人の心を癒すということ」

強さをもつ人は たくさんの優しさももっている人


梓さんのお話からは、覚悟や信念をもって仕事にのぞむこと、それを貫き通す強さをひしひしと感じました。そしてその強さの中からは、たくさんの優しさも感じることができました。
アノコモも、そんな強くて優しい団体でありたいと思います。


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