[第4回]分からないから、分かろうとする

絵本が伝える・伝わる「いのち」
「悲しみを癒す絵本」
チェリーちゃんのはなし

—ワンちゃんを飼っていらっしゃったということですが。

浅井:チェリー、息子が名づけました。女の子でした。
我が家の一員になったのは、自宅前の桜並木が満開のころ。同名の曲も流行っていて、家族で「いい名前だね」、と(「チェリー」1996年スピッツ)。

それ以前は小鳥を飼っていました。迷い鳥でした。とてもかしこくて、息子によくなついていたんです。でも、あやまって開け放しにしておいた窓から逃げてしまって…。
息子は、かくれてシクシク泣いていました。一人っ子の息子にとって、まるで兄弟のような存在だったんです。
そこで、小鳥の代わりをと、主人が訪れたペットショップが、チェリーとの出合いの場所でした。
主人は一瞬で決めたそうです。一目惚れだったんですね。

—そういう運命みたいな出合いって、ありますよね。

浅井:男の子しかいないわたしにとって、チェリーはまるで娘のような存在でした。
でも5年前に…。16才でした。
エサを食べられなくなり、動けなくなり、最後は目も見えなくなったのに、散歩に行こうとリードを引っぱるんです。
今、思い出しても泣けてきます。

しばし沈黙のあと、目頭をおさえる浅井さん。アノコモスタッフも同じく…。


浅井:ライオン動物病院さんには1週間ほどお世話になりましたが、呉先生の「最期はご自宅で看取ってあげては」というアドバイスで連れ帰り、家族で見送りました。
それから5年…。ようやく最近…、いえ、まだダメですね。

—本当に「娘さん」だったんですね。

浅井:家族を100%受け入れてくれる、かけがえのない存在でした。

そんなわたしに寄り添い、いっしょに泣いてくださる方がいました。お店のお客さんでした。同じ悲しみを経験をなさったんですね。

そして『きみにあえて よかった』(1997年 エリザベス・デール フレデリック・ジュース)を教えてくださいました。愛犬を失って悲しんでいた少年が、愛する者といっしょにすごせた幸せに気づくというお話です。本来ならわたしがお教えする側なのに、立場が逆ですね(笑)。

このとき、いのちと絵本の関係が見えた気がします。
そして、わたしと同じように、愛するものを失い傷ついた人の心を、絵本で慰められたら、と思うようになりました。

—多くの子どもがペットの死により、はじめて生命というものを意識します。
子どもが赤ちゃんのころにペットを飼いはじめたとします。仲良く、いっしょに兄弟姉妹のように成長することでしょう。しかしおよそ10才前後、物心ついた時にペットが寿命を迎え…。人生でだいじなことを教えてくれますよね。


読み聞かせ、語り合うということ、
通じ合うということ

—読み聞かせという言葉がありますが。
本を読み聞かせることで、子どもにどんな影響を与えるのでしょう?


浅井:わたしの話ではありませんが、ある方が買物中にお友達と話していたら、突然声をかけられたそうです。「読み聞かせをしてくれたおばちゃんですね?」って。声って、記憶に残るものなんですね。

アノコモスタッフ:「話し方は人によって、ぜんぜんちがいますよね。『先生とちがう~!ヘタくそ~!』なんて言われちゃうことも(笑)」


—ぼくは絵本3年生なんですけど(※3才のお子さんのパパです)、子どもが生まれたことで学ぶことが多くて。
赤ちゃんはまだ言葉が分からないけど、通じ合っている感じがあって。アイコンタクトというか、テレパシーというのかわからないですけど。
今、人のつながりをネットなどに頼ることが多いですけど、こうしてリアルで、体温を感じながら伝え合うことって、すごく大事だと思うんです。


アノコモスタッフ:「3〜4ヶ月の赤ちゃんでも、お母さんの読み聞かせに、ちゃんと笑うシーンで笑うんですよ。
お母さんの気持ちが分かるんですね。お母さんと赤ちゃんは、たがいに心をくみ取ろうとしますよね」
「そうそう!」「お母さんと赤ちゃんが一緒にいる光景って、いつくしみの光があふれていますよね」


浅井:分からないから、分かろうとする。
言葉に頼らないからいっそう、通じ合うのかも。
チェリーもそうでした。

絵本と出合う。
その人にとって大事な一冊に…。

—ご来店されたお客さんに、国内外の作品を問わず、内容から作者から出版社から、浅井さんは即座に提供してくださいます。

呉:「どうしてそんなにお詳しいんですか?」

浅井:いえ、そんな…。

呉「特別な勉強をされたことは?」

浅井:ないですね。やはり「好きだから」の一言でしょうか。

—絵本のスペシャリストとお聞きしていますよ。
さらにすごいなと思ったのは、お客さん一人ひとりに最適な本を選んでいただけるとか。

子どもだけじゃなく、悩みを抱えた大人にも「この本を読むといいですよ」と。
そういったことは、どうして分かるんでしょうか?


浅井:ええ、お話ししていると、わかるんです。

—ある種、カウンセラーみたいなものだと思いました。

浅井:そうなれればいいんですけど…。
いっぱい学んで、人と出会って、お一人おひとりにいい本を教えて差しあげたいですね。


—実は、ぼくの「生きているうちにやることリスト」の中に、絵本を書くことがあるんです。
その時はアドバイス、ぜひお願いします(笑)


浅井:喜んで。
今日はいろいろ思い出させてくださって、ありがとうございました。

—ありがとうございました!

<インタビューは今回で終了です。第5回は、インタビューには載せきれなかったこぼれ話をお届けします! 次回は 2017/03/05 Sun に更新します>


絵本屋「ちいさいおうち」について


「ちいさいおうち」では毎週、読み聞かせの会を開催。また「ちいさいおうちだより」を刊行し、本や詩を紹介するとともに、児童文学の研究会「バオバブの会」も主催してみえます。

※『ちいさいおうち』はバージニア・リー・バートンの名作。日本では1954年に石井桃子の訳で発行されました。
※お店のロゴマークを手がけたのは絵本作家の高畠 純さん。代表作に『わんわん わんわん』『おどります』『おとうさんのえほん』など。「ちいさいおうち」の看板には、池の面にうつった4軒の家と、ワンちゃんが描かれています。

  • ちいさいおうち
  • 〒444-0057 愛知県岡崎市材木町3-2
  • 営業時間:10:00~18:00
  • 定休日:水曜日
  • 公式ホームページ

【目次】浅井さんの絵本を通して知ったこと「言葉に頼らないから、いっそう通じ合う—。」

絵本と子育てとアノコモ


浅井さんのお話をうかがっていると、言葉だけではない、心と心のコミュニケーションの大切さを実感します。言葉をまだ話せない子どもと、言葉を持たない動物、だからこそ通じ合える関係がある。そんな心と心の関係を、この地域社会にも広めていきたいと、アノコモは考えています。


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